【1日でも長く穏やかに】酸素について再考します
こんにちは、管理人です。
今回はTwitterでご案内しました通りDM末期のケア代表格とも言える「酸素吸入」について記事をしたためてまいります。
原因不明の呼吸器機能低下
DMの症状が進行すると自発的な呼吸すらままならなくなるということは、DMに関する基礎知識を書いた記事にてご説明しております。ただ筋肉に力が入らなくなってしまうことは関係性が薄く、はっきりとした原因がわかっていないというのが2021年11月での現状です。
岐阜大学動物病院神経科様の見解によりますと、症状の進行が進むにつれ自然と呼吸の形態が異なっていくという観察結果を提示されております。以下にその判別法を引用しますのでまずはこの記事の予備知識としてお読みください。
正常な呼吸をしている動物は胸腹式呼吸をしています。これは胸部(肋間筋)と腹部(横隔膜)の両方を使って行う呼吸です。胸腹式呼吸をしている動物では、胸部と腹部の両方を動かしていることがわかります(動画)。DMが進行すると次第に胸部の動きが低下します。これは脊髄の変性が進行し、肋間筋を支配する肋間神経に麻痺が出てくるからです。DMの中期以降(概ね発症後2年以降)には胸部の動きが減少し、その後は腹部だけを動かす腹式呼吸になる犬が多いです(動画)。この時期は、肋間筋は完全に麻痺し、横隔膜のみを動かして呼吸をしています。肋間筋が麻痺をすると、横隔膜をより大きく動かして呼吸をしようとしますので、腹部の動きはさらに大きくなります。
Grade1の呼吸運動様式。胸郭と腹部を動かす胸腹式呼吸をしている。
Grade3の呼吸運動様式。胸郭の運動はほぼ消失し、腹部だけを動かす腹式呼吸をしている。
岐阜大学動物病院神経科HPより引用
引用元でも言及されていますが、腹部のみの呼吸になっていると判断できている場合は当然に呼吸の困難をできるだけ除去するため腹部の圧迫を避ける姿勢を保つことが肝要になってきます。自発的な体勢変化を行えなくなったコギさんは、できる限り人の手によって横向きの体勢を長めに維持することをお勧めします。飼い主様が睡眠をとられる夜間には特に注意が必要となりますね。
普段から横向きの体勢に慣れているコギさんであれば問題はないのですが、そうでない場合は精神的に不安やストレスの原因になる可能性もあり時間配分のバランスを保つことに苦労されることも予想されます。我が家のロンさんは幸いにして自ら仰向け(いわゆる「ヘソ天」)でくつろぐことも多くあったので横向きの体勢でもあまり問題は起きませんでした。
あー楽じゃー(1歳でこの貫禄)
酸素が必要と感じたら
前置きが長くなりましたが、少しでもコギさんを楽にしてあげるにはやはり直接の酸素吸入を行うことが対処として適切なのではないかと考えます。
酸素ハウスを設置できる環境にない場合や必要性を感じないなどの場合はスポーツ選手が行う、お手軽なマスク式酸素吸入器の利用も有効です。
Twitterのフォロワー様の中でもマスク式を採用されている方をお見受けします。上記の記事を配信した際にありがたいことにリプライを頂きまして、酸素には「医療用」と「工業用」という分類が存在するということをご教示いただきました。
貴重な情報ありがとうございます うちは、今、日本医療のレンタルでとてもわかりやすく快適にすごしています 業者の中には医療酸素ではなくて、工業用酸素で安価に貸しているところもあるそうで、よく調べたほうがいいです いつもありがとうございます
— mariko.y (@yukiakari69) July 9, 2021
こういった情報をどんどん蓄積していくことがこのサイトの役割だと考えておりますので、今後ともよろしくお願いします。また、リプライを頂いたmariko.y様には改めてお礼申し上げます。
では「医療用」と「工業用」では何が違うのか、また犬もしくはその他の動物にも適用が可能なのかを管理人なりの解釈で書き連ねてまいります。
結論から申し上げますが、工業用と医療用の性能における決定的な相違点は「まるでない」と言ってよいです。奇しくも現在はコロナ禍にあって酸素の重要性が注目されており、ヒトへ工業用の酸素を医療用へと転用することを目的とした動きが際立っているのは皆様周知の事実だと思われます。裏を返せばひときわ重んじられる人間の生命維持ですら工業用の酸素で賄えるのですから、動物への転用も可能だろうということは想像に難くないですね。
ただし自家用のものとして取り扱う場合には管理を厳重に行い火気の傍に置かないなど危険性をできるだけ遠ざけた運用が飼い主様には求められますので、空気が乾燥するこの時期はくれぐれもご注意ください。
ひとまず「工業用酸素」と謳って良い基準があり、そのポイントさえ押さえてしまえばあとは安価に手に入れる方法を模索するだけで済みます。「工業用酸素」として販売できる基準は以下の通りです。
- 純度:99.5 体積%以上
- 測定方法:磁気式分析法又は銅アンモニア法
- 露点:-55℃以下(水分体積分率20.7 ppm以下に相当)
- 測定機器:静電容量式水分計、鏡面冷却式露点計、水晶発振式水分計
ケムステニュースさまより引用
JIS K1101という規格に基づき「工業用酸素」と称して流通が許可されています。しかし管理人が調べてみたところはやりコロナ禍の影響もあるのか、安価で品質基準を満たしているような商品をネットで探してみたのですが医療用のものがヒットするのみで、工業用酸素はそれなりのメーカーに接触しないと手に入らないというのが現状であるように思えます。工業用製品を一手に扱うネット通販サイト、モノタロウでさえも(管理人の力では)見つけられませんでした。
株式会社新東さまより引用
昨今はネットで手軽に販売できるほど在庫が多いわけではないということが考えられます。となると酸素を取り扱うメーカーに直接発注をかけるのが手っ取り早いでしょう。コロナ禍以前の価格でとは言わないまでも、医療用酸素も価格が高騰している現状や怪しい酸素発生装置、規格を満たせない純度99%としか謳っていない酸素缶がネットショップで跋扈してますので需要の高い一時のビジネスとして注目されていることは間違いないと考えています。0.5%という数字では性能における有意な差は少ないのかもしれませんが、信頼性を問う上ではやや問題があるだろうと管理人は考え規格を満たしているものを推奨します。
管理人が考えるに各種通販サイトでメーカー(国内で有名な企業推奨)を確認し企業HPを通じてメールないしは電話で問い合わせる、という手順が最短ではないでしょうか。
品質の良い酸素で穏やかな生活を
こういった状況になるということはそこから年単位でも闘病生活は難しいと経験や皆様の情報を基に感じるのですが、コギさんの辛さを少しでも和らげてあげたいという気持ちを持つのは自然なことですし、当サイトはそれを推奨します。
我が家のロンさんは残念ながらそれをする間もなく命を失ってしまいましたが、酸素を与えられる状態まで永らえてくれることは幸運なこととお考えいただければ、コギさんのお世話にも温かみを感じられるのではないでしょうか。抱きかかえて酸素を吸わせるときのコギさんの温もりをそのまま感じながら穏やかな生活を1日でも長くお過ごしいただきたいと願ってやみません。
ご主人も今、息してるんですよ
はー、今回は難しい記事となりました。でも僕自身の脳の血肉になってくれるので多少大変でもの皆様に活用していただければと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。