改正動物愛護法、16年に及ぶ7日間を懸けた闘争

こんにちは、管理人です。

少し前、フィナンシャルプランナーを名乗るライターが株式のことについてWeb記事で説明していました。
「株は下がると思う人が多ければ下がり、上がると思う人が多ければ上がります」
と書かれていました。

僕は間違いだと思います。

仮に100人が上がると思って1万円ずつ100万円分の株を買ったとしても、1人の株主が下がると思って1000万円の株を売却すれば株価は下がります。なので、株価の上下に人数は関係ないのです。

今しきりに証券会社、銀行などが投資信託の販売を宣伝していますが、こういった金融商品は販売員の名札などにあるFP等の資格や肩書きに惑わされず、一般的な知識を飛び込む前に身につけることをお勧めします。特に信託報酬、売却手数料にはご注意。

儲かるなら、自分たちだけでやるんですから。それを人に勧めるって、ねぇ。


ご主人、飽きましたよ

怒られた。前置きが長くなりました。
今回はコーギーさんの世界からちょっと離れ、以前Twitterで報告しました改正動物愛護法の本格的施行について「こんなことがあっていいのか…」と数多の不条理を突きつけられてきた管理人自身も若干引くまでに至ったその経緯を、かいつまんで世に知らしめたく記事を配信します。

以前にも改正動物愛護法が施行されましたという記事で内容をご紹介しましたが、今回施行されたものはもっと動物とそれを取り巻く環境に対してクリティカルな内容です。

7日延ばすために16年の歳月

2021年6月1日に施行された部分は「動物愛護法第25条の5・幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限」なる条文が主になっています。

改正後の条文:犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後五十六日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。

これが2021年6月1日から施行された内容です。以後、当サイトではこの条文を「8週齢規制」と表します。噛み砕いて言うと犬猫の販売を生後から8週間を経過しない生体の販売を禁止する法律です。
それまでは49日、つまり7週齢でした。この7日間の何が大事かですが、生まれたての動物は親の生育における過程で「生き物として本能的に備わっている教育」を行う期間が必要です。それが十分に行われないまま親から引き離された子供の生体は成体になるにつれ、凶暴化や噛み癖、無駄吠え、他の生体とのコミュニケーション障害など問題行動が十分に行われた生体より多く見られる、免疫力が低くなるということが学術界の研究で明らかになりました。
それを鑑みた上で、更に長い間親の教育や何より親の温もりを伝えるために最低限必要な期間が「8週齢」なのではないか、という議論が起こり動物愛護団体等の活動で「改正動物愛護法」の動きを新聞から報じられたのが2005年(読売新聞)です。
当時の環境省は「科学的根拠に乏しい」と8週齢規制に消極的な姿勢を示していましたが、徐々に関連した研究が行われるにつれ、その必要性が科学的にも明らかになり環境省の旗色も悪くなってきました。当時は政府もまだ「科学」に屈してたんだとむしろ驚きます。
その過程で同時にペットショップ団体から「1日でも早く可愛いうちに高く販売したい」「8週齢までの生育にコストがかかる」などの身勝手な理由で抵抗を行っていました。

上書きで塗り潰された8週齢規制

「改正」動物愛護法から「8週齢規制」は存在してはいたものの

附則
(経過措置)
第七条 施行日から起算して三年を経過する日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十五日」と読み替えるものとする。
2 前項に規定する期間を経過する日の翌日から別に法律で定める日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十九日」と読み替えるものとする。

つまりこの法律が施行された時点から7週齢どころか3年間は「45日」で販売を許可する「緩和措置」までが取られた上、改正法が施行されてもこの附則があるため「7週齢販売」の規制強化は発動しなくなり有形無実化。所謂「霞ヶ関文学」の一環です(この他には事例に「専ら」「等」がつく条文は要注意)。
これに反発した動物愛護団体はこの附則の撤廃に向けて活動を継続、ペットショップ団体の方針転換もあり改正法施行2年後にこの附則は効力を失う決定を経て、2021年6月1日に「8週齢規制」が日の目を見ました。

掲題の「16年」はここから来ています。

みこもこれは良かったと思うのですじゃ

由々しき「数人」

しかし戦いはまだ終わっていませんでした。
この2年後施行の決定がなされる過程で「日本犬保存会(当時会長:岸信夫氏(自民党))」と「秋田犬保存会(当時会長:遠藤敬氏(日本維新の会))」の強い抵抗が改正間際まで続き、突如例外規定が設けられました。

(指定犬に係る特例)
2 専ら文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百九条第一項の規定により天然記念物として指定された犬(以下この項において「指定犬」という。)の繁殖を行う第二十二条の五に規定する犬猫等販売業者(以下この項において「指定犬繁殖販売業者」という。)が、犬猫等販売業者以外の者に指定犬を販売する場合における当該指定犬繁殖販売業者に対する同条の規定の適用については、同条中「五十六日」とあるのは、「四十九日」とする。

この指定犬とは芝犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、北海道犬、四国犬の6種です。除外の主たる理由は「天然記念物保存のため」という立法趣旨と真逆の論理でした。「日本犬は小さいうちに親元から離すのが伝統」などと意味不明な供述をしており、動機は・・・その先は言う必要ありませんね。
前置きの株取引のように1000人で斬りかかっても僅か数人の権力で風穴を開けられてしまうのが今の世間です。

ようやく動き出した8週齢規制ですが、問題は山積みです。販売業者が生年月日を偽ることもできますし、それを見極めるための手段は確立されていません。これに違反していると立証するには困難を極めるため実質野放しになる可能性もあります。
「努力義務」と定義された条文は営利のためなら遵守しないでしょうし、立ち入り調査などが行われるのかも不透明です。繁殖させる母体に関する規制もやや甘く感じ、実質際限なく繁殖の道具として使われる母体もあるかもしれません。人間のような出生届がありませんから、記録の改竄は容易にできます。

それでも少しだけ犬猫さんに寄り添えたのは下記の方々のお力あってのことですので、僕は感謝の気持ちを胸に今は行く末を見守って行きます。記事の執筆時、参考にもさせていただきました。

主に改正法成立にご尽力されました皆様

  • JAVA(NPO法人 動物実験の廃止を求める会)公式HP
  • 認定NPO法人アニマルライツセンター公式HP
  • PEACE公式HP
  • 超党派議員連盟プロジェクトチーム「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」
  • 公共財団法人動物環境・福祉協会Eva(代表理事:杉本彩)公式HP
  • (霞ヶ関文学)




    みなさんありがとうございますなんですよ

    命あってのものだしね

    この話には管理人的に続きがあります。
    半年ほど前の家内からの伝聞で恐縮ですが、僕の最寄り駅付近に小鳥を主に扱うお店があり、新型コロナの猛威の最中、癒しを求めてか小鳥を飼うと買っていく方が多く現れ、物流上の仕入れができないことも手伝って48歳の僕が子供の頃からあった小鳥屋さんの歴史上初めて「全生体売り切れ」と言う事態になったそうです。

    「まっこと愚かの極み!」

    僕は真っ先にそう思いました。確かに生き物を飼うことは子供の情操教育上良いことかもしれません。ただ世の中の変化を理由に命をたやすく求めるのは思い上がりも甚だしいと感じました。
    幸い(?)コロナ禍が長引いているとは言うものの、当時は楽観的なムードが漂い始めており小鳥たちはさぞ大事にされているだろうと信じているものの、やはり「愛玩」の対象として見ているように感じ、そんな人間の頼りなさに改めて辟易したものです。
    全ての人間に当てはまるとは言えない思考なのは承知していますし、自分自身がどうも俗世に対しカタブツすぎるのも最近わかってきました。
    東京はすでに小鳥の命を心配しているどころではない状態ですが、せめて小鳥を遺してしまうことが起こらないでほしいと願います。

    家にいて暇だからと安易な気持ちで犬猫さんを迎え入れることのないよう、強い心構えで以って犬猫さん親子の温かみを7日間残すのに16年かかり、それでも不十分という現実を、特にこれから犬猫さんを初めて迎えようとお考えの方には伝えしたい次第です。

    コーギーさんと健やかに

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